かつおだしをよりおいしくするコツを大公開!
みそ汁や吸い物、煮物など、和食を作るうえで欠かせないのが「だし」。
顆粒だしが普及したため、自分でだしをとることがめんどうだと思っているひとも多いはず。
しかし、やっぱり本物を使っただしは、香りもコクも化学調味料では味わえないものがあります。
その中でも、かつおだしは和食のベースになるものです。かつおだしは豊かな風味と香りが特長で、だしを主役にしたすまし汁や茶わん蒸しに適しています。
かつお節はビタミンやミネラル、アミノ酸が凝縮した発酵食品です。最近では、フレンチやイタリアンなどの隠し味のだしに使われることも。
そんなかつお節を存分に生かし、より一層おいしいだしにするコツをお伝えします。
そもそも「だし」の役割って?
【おいしさにかかわる「うま味」を加える】
だしの役割は、料理にうま味を加え、素材そのものの味を引き立てることです。
うま味とは、甘味、塩味、酸味、苦味に次ぐ5つ目の味覚で、おいしさに深くかかわっています。うま味は、およそ100年前に日本人が発見し、それ以降和食だけではなく、海外でも注目されるようになりました。うま味成分は肉や魚、野菜など、さまざまな食材に含まれており、和食だけでなく、海外でもうま味がたくさん含まれる「だし」が料理に使われます。
日本のだしは海外と違って、料理をするときに手軽に取れるのが特徴的。
海外のだしといえばブイヨンが有名ですが、こちらは野菜を何時間も煮て作ります。それに対し、日本のだしは昆布やかつお節など、乾燥で細胞が壊れているため、短時間でうま味や香りを抽出することができます。また、発酵や熟成の過程でグルタミン酸が増加し、もともとの食材よりさらにうま味が増しています。このメリットを生かし、どんどん料理に取り入れていきたいですね。
【減塩効果】
塩分の摂りすぎは、さまざまな生活習慣病につながることが指摘されています。けれど、極端に減塩した料理は味気がなく、身体のために・・・と思いつつも継続できなければ意味がありません。そこで、だしのうま味が効果を発揮します。だしのうま味は塩味を引き立て、感じやすくする効果があります。その結果、だしを入れない料理よりも、調味料などで使う塩やしょうゆの量を抑えることができるのです。病院や老人ホーム等でも塩分を控えるため、だしを効かせた料理が多くなっています。
塩分を減らすと、むくみが減る、脳疾患や心疾患などの生活習慣病を予防する、腎機能を保つ、胃がんのリスクを下げる等の嬉しい効果があります。
【消化を助ける】
酸味が唾液の分泌をうながすことはよく知られていますが、うま味の方が唾液の分泌をうながし、その効果を持続させることが明らかになっています。うま味はタンパク質を摂取したことをからだに知らせるシグナルの役割を果たしています。うま味を感じることによって唾液や消化液が分泌され、タンパク質の消化をスムーズに進めることができるのです。
【高齢者の味覚障害予防】
前述した唾液の分泌が大きく関わります。高齢者の味覚障害の原因のひとつに、唾液の分泌低下が関係しているといわれています。うま味によって唾液の分泌をうながすと、この障害が改善するという報告があります。
かつおだしをよりおいしくするコツ
【うま味の相乗効果!昆布とかつお節の混合だしに】
代表的なうま味物質には、昆布に含まれる「グルタミン酸(アミノ酸)」や、かつお節に含まれる「イノシン酸(核酸)」があります。アミノ酸と核酸のうま味成分を組み合わすことで、うま味が7~8倍も強く感じられることが、科学的に証明されています。これを、「うま味の相乗効果」といいます。
和食以外にも、相乗効果は利用されています。ブイヨンでは野菜(グルタミン酸)と牛肉(イノシン酸)、中華だしではねぎやしょうが(グルタミン酸)と鶏肉(イノシン酸)というように、海外でも古くから相乗効果が利用されています。
【料理によって抽出温度と時間を変える】
かつお節のだしは、「香り」と「うま味(イノシン酸)」が大きな特徴です。その特徴のどちらをより引き立てたいのか、それによってだしの抽出方法を変えてみましょう。
(1)すまし汁や茶わん蒸しに使う場合は、湯温は70℃で時間はかけずに。
70℃はもっともかつお節の香りが抽出されやすい温度とされています。
85℃以上になってしまうと、タンパク質が溶け出し凝固してしまうため、だしが濁り、かつお節独特のくさみも出てきます。また、せっかく出た香りが揮発してしまいます。
すまし汁や茶わん蒸しなど、澄んだ色を必要としたり、繊細な味の料理にしたいときは温度はあげすぎず、抽出時間も短くします。
1.鍋に湯を沸かし沸騰したら火をとめ、水を少し加える(1Lの湯に300~400mlの水くらい)。
2.そこへかつお節を入れる。
3.静かに沈むのを待ち、1~2分したらかつお節をこす。
(2)味が濃い目の主菜に使う場合やコクのある料理を作る場合は、湯温85℃で少しだけじっくりと。
香りを出すには70℃でしたが、うま味成分であるイノシン酸は85℃でもっとも抽出されます(70℃でも、すまし汁につかう分には十分に抽出されます)。85℃にするとかつお節の雑味も抽出されますが、その雑味はコクともいえます。
85℃で抽出することで、うま味とコクが効き、しっかりしただしが完成します。だしの濁りが気にならない料理に使うことをおすすめします。
1. 沸騰前の湯にかつお節を入れる
2. 沸騰しないくらいの弱火にし、5分加熱します。(5分以上煮出す料亭もあります。)
3. 火を止め、かつお節をこす。
カツオだけじゃない!他にも色々ダシの世界
<かつお節>
豊かな風味と独特の香りが特徴で、だしの濃さの調節もできる万能なだし。
煮浸しやすまし汁、茶碗蒸し、おひたしなど、出汁そのものの美味しさを楽しみたい場合は、鰹出汁がおすすめです。動物性の出汁なので野菜と相性が良く、繊細な野菜の味を引き立ててくれます。
<昆布だし>
昆布出汁の原料となる昆布は、産地によって特徴が異なり、例えば厚みがあり幅の広い真昆布、濃厚な出汁が取れる羅臼昆布、上品な出汁が特徴の利尻昆布、やわらかい口当たりの日高昆布などがあります。全体的に控えめな旨味が特徴で、グルタミン酸が多く含まれています。シンプルで素材の味を邪魔しないので、ほかのだしと組み合わせたり、汁物から煮物、鍋物など多くの素材と相性が良かったりします。魚を使った煮物や汁物などには、かつおだしではなく昆布出汁を使うのがおすすめです。
<煮干しだし>
かつおだしと同じく、イノシン酸が多く含まれている煮干し。かつおだしに比べて酸味が弱く、香りの強い濃厚な風味が特徴です。
煮干し出汁も動物性の出汁なので、野菜料理との相性がよく、なかでも味噌汁との相性は抜群。うどんやそばのつゆにも向いています。ラーメンのだしにもよく使われます。
<しいたけだし>
干ししいたけからだしをとります。低温でゆっくりと戻すことでより味わい深い出汁が取れます。だしとしてはあまり知られない干ししいたけですが、とにかく独特な風味が強く、グアニル酸と呼ばれる旨味成分が豊富です。
しいたけだしは、だしをとったしいたけも美味しくいただけるため、そのまま食べるような料理に投入するのがおすすめです。煮ものや炊き込みご飯などによく合います。和食だけではなく中華料理にもよく合い、炒め物や煮もの、スープなどさまざまな料理につかうことができます。急いでいるときはお湯でも良いですが、時間がある場合は水でゆっくり戻しましょう。
いかがだったでしょうか?
だしの特徴をとらえ、それぞれに合っただしの味を感じてみてくださいね!!