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なぜ美味しい?ダシとうま味は深い関係がある!

和食に欠かせないダシはうま味の宝庫。美味しいだけではなく体にも良い影響を与えるダシはうま味が詰まっていますが、そのうま味は『UMAMI』として世界でも注目されています。
ではなぜ美味しいと感じるのか?今回はダシが美味しい理由について『うま味』に注目してご紹介していきたいと思います!


うま味=美味しさじゃない!うま味は『味』の1つ

「だし」はなぜこんなに日本人に、そして世界中の人に愛されているのでしょうか?その答えはズバリ「うま味」のかたまりだから!
この『うま味』というのは、旨さや美味しさとは別物です。
『うま味』とは、甘味・酸味・塩味・苦味と並ぶ基本味(きほんみ)のひとつで、“他の味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した味”のことを指します。
つまり、美味しい!という感覚的なものではなくてそもそも『味』の1つの名前で、甘いと思うのと同列ということ。ちょっと新鮮な表現かもしれません。
具体的にはダシを口に含んだときに感じる深いコクやまろやかな味わい。これがうま味です。

さて、今まで世界では長い間、舌が感じることのできる味覚は
・酸味
・甘味
・塩味
・苦味
の4つとされていました。
ではいつ『うま味』が発見されて人々に認知されるようになったのでしょうか?

100年前には見つかっていた!うま味の歴史とは?

1908年に現在の東京大学である東京帝国大学の池田教授が昆布の中からうま味成分である「グルタミン酸」を発見しました。今の世でグルタミン酸はうま味の成分として有名です。
そのうま味の成分は実は日本人が第一発見者だったんです!
池田教授はダシの美味しさには4つの味覚以外に何かあると感じていた事から発見に至ったとのことです。

そして1913年に、今度はかつお節から抽出した「イノシン酸」もうま味成分であることを池田教授の弟子が確認し、1957年にはヤマサ醤油の研究員がシイタケに含まれる「グアニル酸」が新たなうま味成分であることを発見。うま味の歴史には日本人が多く関わっているんです。

<発見されたうま味成分>
■昆布:グルタミン酸
■かつお節:イノシン酸
■しいたけ:グアニル酸

次々に日本で発見されたものの、これらのうま味成分はなかなか世界で認められませんでした。
これは昔からだしを食事に取り入れてきた日本人と欧米の文化に大きな違いがあったことも影響していて、欧米の研究者には「うま味は塩味・甘味などがほどよく調和した味覚に過ぎない」と言われていました。
しかし!舌の感覚細胞にグルタミン酸に反応する受容体があることをマイアミ大学の研究グループが発見したことで、舌がうま味を感じていることが証明されることになりました。
それはなんと西暦2000年のこと。池田教授がうま味を発見してからおよそ100年もたっています。そしてやっと世界にうま味が認められるようになりました。
現在うま味は日本だけでなく世界的にも「UMAMI」と呼ばれ、その地位を確立。こんな流れで「うま味」は世界共通の言葉になりました。

たくさんある『うま味成分』の違いとは?

「うま味」のかたまりであるダシは、昆布やかつお節、しいたけなど色々な食材からとることができます。それぞれのダシの味や特徴は様々で、実はうま味成分も食材によって違うんです!
ここからはうま味成分の種類にせまっていきます。

<代表的なグルタミン酸>

一番有名なうま味成分とも言えるのが「グルタミン酸」です。
昆布やチーズに多く含まれていて、白菜やトマト、ブロッコリーなどの野菜にも含まれています。植物性・動物性どちらの食材にも含まれているグルタミン酸は、なんと母乳にも多く含まれています!その量は昆布に匹敵するほどと言われていて、母乳は私たちにとって初めてのうま味との出会いともいえます。人は生まれてすぐにうま味に触れていたんですね。
さらにグルタミン酸は身体の中でもつくられていて、身体の中には約2%の割合でグルタミン酸が含まれています。グルタミン酸はたんぱく質を構成したり、脳の興奮系神経伝達物質としての機能を担っていて、実は私たちの体の維持のためには必要不可欠な存在なんです。

<動物系に含まれるイノシン酸>

もうひとつ有名なうま味成分の「イノシン酸」。
イノシン酸はかつお節や豚肉、鶏肉など、魚や肉類に多く含まれています。
実はイノシン酸は生きている動物の中には存在していなくて、動物の死後に酵素の働きによって核酸というモノが変化してつくられる物質なんです。核酸は私たちを含む全ての動物の細胞内に存在していて、たんぱく質の合成や生物の傷ついた遺伝子を修復する作用を持っています。野菜などにはその核酸が含まれていないのでイノシン酸はありません。
イノシン酸には細胞が活性化され、新陳代謝を促す作用があります。

<シイタケが含むグアニル酸>

グルタミン酸・イノシン酸に次いで知られているのが「グアニル酸」。
こちらはシイタケなどのきのこ類に含まれています。このグアニル酸もイノシン酸と同じ核酸のひとつ。ですがグルタミン酸、イノシン酸に比べると若干マイナーというか、知名度は低いですよね。
それはもしかしたら『グアニル酸』を含む食材がとっても少ないのが原因かもしれません。
グアニル酸を含んでいる主な食材は、干ししいたけ、乾燥ポルチーニ茸、のり、ドライトマトなど。その中でもグアニル酸を多く含んでいるのは、干ししいたけくらいなんです。
干ししいたけにはグアニル酸だけじゃなくグルタミン酸も含まれているので、ひとつの食材だけでうま味の相乗効果が実現できちゃうとっても万能な食材といえます!

この3つのほかにも、うま味成分がいくつかあるので並べてみます。

・コハク酸:貝類に含まれる
・アスパラギン酸:主に野菜や大豆製品に含まれる
・アデニル酸:魚介類や畜肉に含まれる

などなど…
メジャーな物からマイナーな物まで様々ですが、うま味成分はとっても奥が深いです。

うま味を重ねてもっと美味しくうま味の相乗効果とは?

みなさん「うま味の相乗効果」って覚えていますか?実は学校の授業で習う言葉です。
うま味物質はそれひとつで使うよりも、違ううま味成分を組み合わせることでうま味が何倍にも大きくなって感じられるようになるということが科学的に証明されています。これを「うま味の相乗効果」と言うんですね!
昆布からとれるグルタミン酸は、アミノ酸系
かつお節・シイタケから取れるイノシン酸とグアニル酸は核酸系
と分類することができ、それぞれを掛け合わせると単独で使うよりもうま味を強く感じることができます。

日本の合わせダシは世界最強!?

うま味の相乗効果のお話で気付いた方もいるかも?しれませんが、日本のおだしの代表であるかつお節と昆布の合わせだしはまさに、うま味の相乗効果の理にかなった最高の組み合わせなんです!美味しいものにはやはりちゃんと理由があるんですね。
うま味の相乗効果は1960年に研究結果いう観点で発見されてはいますが、それよりもずっと前から日本人はうま味の相乗効果を理解していたということ。すごいことだと思います。
ダシは健康にも良いと言われますが、しっかりダシをきかせることでそのうま味によって多くの塩分を必要とせず美味しく料理を食べることができます。塩分の取りすぎを防ぎ、美味しく減塩ができてしまう…だしを使うメリットは本当に幅広く存在します。
私たちの健康のためにも役に立っているダシのうま味成分。是非みなさんダシを上手に使ってうま味を増し増しに活用してみてください!