HOME > だし職人のBLOG > 完成まで6ヶ月⁉︎手間暇かかるカツオ節の作り方!

完成まで6ヶ月⁉︎手間暇かかるカツオ節の作り方!

みなさん、かつお節のつくり方って知っていますか?
その硬さでギネスブックに登録されたほどの『乾物』であるカツオ節ですが、だしをとったり、お浸しなどに削り節をトッピングしたりと私たちは毎日手軽に使っています。
お出汁は日本人の生活に欠かせないので、私たちは実は毎日カツオ節を口にしているにしているんです!
手軽に手に入るかつお節ですが、つくるのはひじょ〜に手間暇がかかり、手軽ではありません!
たくさんの職人さんが手塩にかけてひとつずつ大事につくっているんです。
そんなかつお節の製造工程について、今回はご紹介したいと思います!


職人技で6ヶ月!かつお節ができるまで

かつお節をつくるには、とてもたくさんの工程を踏んでいます。
完成までの期間はなんと、およそ6か月!手作業が必要な部分も多く、とても手間がかかっているんです。世界的に見ても、だしを取るための素材にこれだけの手間暇をかけているものは他にありません。
そんなかつお節は、素材を長時間煮出してうま味を引き出す海外のだしに比べて圧倒的に短時間で美味しいだしを取ることができるんです!
そんな優れた食品であるカツオ節のつくり方を順を追って見てみましょう!

工程1:水揚げと選別

カツオは大きさによって6つに選別され、本節がだいたい4.5~6キロぐらい、それ以下は亀節に使用されます。それ以上大きくなるとしっかり乾燥させるのが難しく、あまりかつお節に向かないんです。さらに鮮度や脂肪の付き具合で、かつお節に向くかも判断しています。鮮度は高い方がいいですが、高すぎるとカツオを煮る工程のときに身割れをおこしてしまうので長年の経験による見極めが必要!
こうして漁獲されたカツオはほとんどが急速冷凍され、港に持ち帰られます。

工程2:解凍

冷凍状態で運ばれたカツオを工場で解凍します。
この解凍の仕方が非常に重要で、しっかり解凍できていないとカツオの身に軽石のような穴ができてしまうので、丸一日かけて行う大事な工程です。
水槽に入れて何回も水を入れ替えながらカツオを解凍していきます。解凍時間は季節や湿度など様々な条件で変わってくるので、熟練の技と経験で細かく調整します。

工程3:生切り〜なまぎり〜

次にカツオを頭・内臓を取り除き、3枚におろします。
大きいカツオはさらに背側と腹側に分けられます。背側でつくられた節を「雄節」、腹側でつくられた節を「雌節」と呼び区別されたりするんですね。
小さいカツオは背側と腹側には分けず3枚におろしたまま使い、その形から「亀節」と呼ばれています。

工程4:籠立て

生切りしたカツオを熱通りの良い金属製のカゴ『煮籠(にかご)』に丁寧に並べます。カゴに入れたカツオが曲がっていたりねじれたままの状態で煮熟すると形の悪いものになってしまうため、形が崩れないようにしっかりと綺麗に並べることが大切です。

工程5:煮熟と放冷

カツオを煮る作業のことを煮熟(しゃじゅく)と言います。籠立てした煮籠を窯に入れて1時間~1時間半ほど煮熟していきます。
釜の中の温度や煮る時間はカツオの大きさや鮮度によって変わってくるので、上等なカツオ節に仕上げるためには管理の徹底が重要です。この煮熟をすることで殺菌され、たんぱく質が変性して脂肪分が除去されます。さらに低温でゆっくり煮熟することで、身割れせず生臭みのない上質なかつお節に仕上がります!
煮熟を終えたあとは風通しの良いところで1時間ほど冷まし、冷ます作業を行うことで身の引き締まったものにすることができます。

この段階で出来ている節を『なまり節』と言います。
かつお節のようにダシはとれませんが、煮付けや身をほぐして和え物にしたりサラダに混ぜて食べるととても美味しいです!

工程6:骨抜き

なまり節を水を張った“骨抜きたらい”と言う水槽に入れ、丁寧に骨を毛抜きで取り除きます。この時に皮や皮下脂肪、ウロコや汚れも綺麗に取ることで口当たりや風味が良くなります。根気のいる作業ですが、とても大切な工程です。

工程7:焙乾〜ばいかん〜

培乾とは燻して乾かすことで、カツオ節を作る時はこの培乾を何回も繰り返し行います。
骨抜きを終えた節はこの段階でも鮮魚とほぼ同じ68%くらいの水分を含んでいて、この水分を抜いていくことであのギネスに載るほどの硬さになるんです!燻すときに使う薪は主にナラ・サクラ・クヌギなどの広葉樹が使われます。
また一番最初に行われる焙乾のことを「一番火」と言い、「二番火」以降とは区別されています。「水抜き焙乾」と呼ばれているのが一番火です。
一番火は表面の水分を除き、雑菌を殺してネト(表面にできる雑菌の集落)の発生を防ぐのが目的で、85~90℃という高温で約1時間行われます。
燻した後は一晩火を止めて寝かし、寝かせることでカツオの中に残っている水分を表に出してカツオの水分をしっかり抜くことができるんです。

工程8:整形

一番火の翌日に行われるのが整形という作業。『修繕』や『こすくり』と言われることもあります。
焙煎したものの中には身が傷ついていたり欠けていたりするものがどうしても出てくるので、これを整えるのが整形の作業なんです。傷ついていたり欠けたままの状態で次の工程に進んでしまうと身割れがおきたり欠損が大きくなってしまうので、それを防ぐために行います。
具体的にはカツオの鮮肉と煮熟肉を混ぜて練り合わせて裏ごししたものを節の欠けた部分や傷ができた部分に塗りこみ、形を整えていきます。

工程9:間歇焙乾〜かんけつばいかん〜

整形を終えた節は再び燻され、培乾の工程が何度も繰り返されます。何度も何度も培乾して30%以下まで水分を減らすのですが、本節だと10~15回ほど、小さい亀節でも6~8回は培乾を繰り返し行います!
こうして出来たもののが『荒節』です。
荒節は「鬼節」とも呼ばれ、節の表面は燻煙中の煙成分(タール)に覆われて黒くなり、表面がザラザラとしています。香りが強く出るのが荒節の特徴で、「花かつお」など市販の削り節の多くはこの荒節を削ったものです。

工程10:削り

荒節は半日ほど日に当てた後、さらに箱などに入れて2~3日放置します。そうすると節の表面が湿気を帯びてやわらかくなるので、そうしたら表面を削って形を整えます。表面のタール分やしみ出してきた脂肪分を取り除くことで、カビが付きやすくなるんですね。
こうして綺麗になった荒節は真っ黒な見た目が綺麗な赤褐色に変わるので「赤むき」や「裸節」と呼ばれたりします。

工程11:カビ付け

裸節は1~2日ほど日に当てられ、その後「カビ付け」という作業に入ります。温度や湿度などがしっかりと管理されている室(むろ)と呼ばれるカビ付け室に運び入れ、夏場だとだいたい6~10日で最初のカビが付いてきます。ちなみにこれが「一番カビ」と呼ばれるもの。
一番カビが付いた節はまた天日干しをしてからブラシでカビを払い落とします。そして再度室に入れてカビ付けが行われるんです。この2回目のカビが『二番カビ』です。
2回以上カビ付けされたものが「本節」となり、3回以上カビ付けされたものが「本枯節」と言われたりしています!

カビがかつお節を守ってくれる!

このようにカビ付けをすることで他の有害なカビなどが付くことを防止し、さらにカビが水分を吸い取ることで節をより乾燥させることができるので保存性を高めることができます。
さらに、こうしてカビ付けをする事でうま味が増すこともわかっているんです!
カビ付けで付着させるカビは物を腐らせる悪いカビではなく、言ってみれば節を美味しくしてくれる『良いカビ』ということ。しっかりとした工程を経てから管理された室で管理することで上等で安全・安心なカツオ節となります。

期間は最低4ヶ月!重量は6分の1!

さて、ここまでの11の工程を終わらせて私たちの知っているカツオ節になるまでにかかる期間はなんと最低でも4か月に及びます!
重量は5キロあったカツオが本枯節になるとおよそ800グラム!1/6になってしまうんです。もともとの水分量が約70%だったのに対して、かつお節になった状態の含有水分は12~15%という驚きの数字になります。
世界一堅いと言われるかつお節は、こうして手間暇をかけてつくられています。

だしの文化は全世界にありますが、諸外国でだしを取るのに使われている材料は野菜や動物系の骨などです。そしてその材料を長時間煮込んで出来上がるのがダシになります。ブイヨンや鶏がらスープなどがその一例ですね。
一方のかつお節は非常に短時間で濃厚なうま味のダシを取ることができますが、その最高のおだしは数ヶ月に及ぶ職人さんの技と手間と時間に支えられています!
かつお節は日本特有の文化の中で生み出された旨味のカタマリ。これからもぜひ積極的に節とダシを楽しんでください!